県北芸術祭、地域の魅力含め「鑑賞」を ジェネラルマネージャー・桑原康介さん

http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/201609/CK2016091902000141.html

東京新聞9月19日引用

”十七日に開幕した県北芸術祭は、県北六市町の振興を目指し、県主導の実行委員会が主催した初めての試みだ。芸術祭の開催は地域にとって、また芸術家にとって、どんな意義があるのか。地方開催の成功例とされる「越後妻有(つまり) 大地の芸術祭」(新潟県)の主催団体に勤務した経験を基に、県北芸術祭のジェネラルマネージャーを務める桑原康介さん(35)に聞いた。

-芸術祭に携わるきっかけは。
東京造形大の学生だった二〇〇〇年に「大地の芸術祭」の第一回を見に行った。都市の美術館にあるような現代アートが里山の風景の中に展開し、そこに多くの人が関わっていることに衝撃を受けた。「美術って、そういうことがあり得るのか」と。美術を通したまちづくりができるかと興味が増し、〇一年から、サポーターとして妻有に通った。卒業後は主催団体のNPO法人に就職し、一二年の開催まで携わった。
-「越後妻有」はどんな芸術祭か。
NPO法人と新潟県十日町市、津南町の共催で三年に一度、開く。当初は県の補助金が出ていたが、今はチケット収入や企業の協賛金などで独り立ちしている。現代美術館「キナーレ」を拠点に、通年で新しい観光需要や雇用を生むことを目標にしている。芸術祭がない年でも企画展を開いたり、集落に置いたアートを軸に芸術家と住民が交流したり。芸術祭の認知度が上がると、デザイナーと協力して地元特産品のパッケージに磨きをかける商品開発もできるようになった。
-芸術祭を開く意義は。
芸術祭は、自分がその場所に行って体感しないと分からない。そこが難しいところであり、良いところでもある。地域の風景とか歴史、スケール感も含めた「鑑賞」という体験をお客さんにしてもらい、地域のファンになってもらう。
芸術家にとっても、現代アートを知らない人たちに新たに作品に触れてもらえる。海岸に構造物を造ったり、重要文化財の建物内に作品を展開したり、行政が関わるからこそ実現できるアートもある。
-県北芸術祭の特徴は。
六市町の広大なエリアは、明確に海と山の要素に分かれている。岡倉天心の北茨城市や、近代産業を支える日立市、温泉や田畑など地域ごとに個性がある。今、全国に百ぐらいの芸術祭がある。広い面積で、いろいろな要素がある場所に作品を展開することは、差別化にもなる。
作品は、地域の文脈に合ったインスタレーション(空間芸術)が中心。例えば、このイリヤ&エミリア・カバコフ夫婦(米国)の「落ちてきた空」。高萩市の高戸海岸の砂は、とても白い。天気が良い日は、作品がよく映える。
私自身、この地域のことを知らずに調査を始めた。どこに作品を置けば良いかと何度も通う中で、いろいろな風景や食べ物、人などの魅力に出会えた。今回、作品を置けなかった良い場所もたくさんありますよ。
<くわばら・こうすけ> NPO法人「越後妻有里山協働機構」職員を2013年まで務め、現在はアートやパッケージデザインのマネジメント会社「桑原商店」代表。東京都品川区在住。”