会期
2017年12月1日(金)-12月10日(日)
14:00-20:00 /最終日18:00まで
休廊日:火曜日
入場無料
オープニングレセプション:
2017年12月1日(金) 18:30-20:00
作家とキュレーターの四方幸子による作品解説とオープニングパーティーを開催します。
会場
gallery to plus(東京都目黒区自由が丘1−12−4 B1)※自由が丘駅から徒歩1分
自身の3Dスキャンを含め、実空間とヴァーチャル空間に関わる作品を制作してきた山内。新作は、日々録音している通話音声を元に、心理的・空間的距離の差異とともにコミュニケーションにおける内実の見えづらさを扱うビデオ・インスタレーション。
電話の音声。受話器を取ろうとしたり、訪れた者を見るかのようなロボット。饒舌な空間には、そこはかとない欠落感が漂っている。自身の3Dスキャン映像で実空間とヴァーチャル空間を行き来しながら両者の齟齬をシュールに表現してきた山内が、どこにもいないのだ。
ロボットは、山内の分身のようにも見える。音声は、山内が大家の市澤さんと廃品回収業者にかけた電話で、それぞれ映像作品となっている。《市澤さんにバツの話を聞く》(2014)はアパートの階段下にある「×」マークを巡るやりとりに、現場の実写をつけたもの。《廃品回収のおじさんにテレビの話をする》(新作)はクレーアニメで、実写された模型が手前に置かれている。
通話音声、静止画と見まがう映像とミニマルなカット数。両作はこれらで共通しながら、決定的な違いにある。新作は現場が粘土で再現されている。山内の手による、3D化された記憶である。彫刻を学び、モノからヴァーチャル空間に挑んできた彼が、今回塑像を選んだことは《市澤さん…》からの跳躍的回帰といえるだろう。
山内の姿はない。しかし彼が様々なかたちで偏在・介入し合う場がそこにある。それだけではない。タイトルの「ポチョムキン」(ロボットは「ポチョムキンくん」)は、様々な解釈を喚起するが、山内はそれを「誰でもない誰か」としている。「自己」は他者へと延長され、多重反射に終わりはない。
タイトルにはまた、世界が複数のフィクションの層でできていることが込められている。作品や展覧会も例外ではない。むしろ作品や展覧会は、フィクションによって世界で稼働するフィクションにささやかな亀裂を差し込む戦略としてある。山内はそのことを誰よりも知っている。
四方幸子
山内祥太 Shota Yamauchi
1992年岐阜県生まれ、東京都在住。2016年東京芸術大学映像研究科メディア映像専攻卒業。学生時代に彫刻と映像を学び、近年は3DCGとクロマキー合成を使用した映像作品を制作。
「Synthetic Nature」展(「EEC / Eco Expanded City」、ポーランド・ヴロツワフ、2016)、「Moths, crabs, fluids」(Koszyki Hall、ポーランド・ワルシャワ、2016)、瀬戸内国際芸術祭2016(香川・女木島)、WROビエンナーレ2017(ポーランド・ヴロツワフ)、リボーンアートフェスティバル(石巻、2017)、「TOKYO WONDER SITE – EMERGING 2017恐怖のまわりみち」(トーキョーワンダーサイト本郷、東京、2017)などに出展。主な受賞歴にMEC Award 2015(大賞)、高松メディアアート祭審査委員特別賞、平山郁夫文化芸術賞がある。
企画
キュレーター:四方幸子(Yukiko Shikata)多摩美術大学・東京造形大学客員教授
マネジメント:桑原康介(Kousuke Kuwabara) gallery to plus代表