gallery to plus 企画展 Critical Selfies #3
三木麻郁 個展 「誕生の讃歌 / Hymn of birth」
■ 開催日 :2017年12月15日(金) ― 12月24日(日)
■ 開催時間 : 14:00 ― 20:00 (最終日18:0まで)
■ 休廊日:火曜日
■ 入場料:無料
■ オープニングレセプション:
2017年12月15日(金) 18:30 ― 20:00
作家とキュレーターの四方幸子による作品解説とオープニングパーティーを開催します。
■ 内容:
誕生の日時・場所から観測された星空のカードを、オルゴールとして演奏する装置が並んでいる。
誰かが生を受けたことに由来する音楽を、訪れた誰もが奏でることができる場。
そこでは、この世に共に存在しえたいくつもの生が共鳴し合うことだろう。
壁面をはじめ、異なる素材や形状の家具の上には、円環状の紙が付いた装置がある。これらは三木による「オルゴール」*であり、紙に開いた穴を「楽譜」として、手回しで音を奏でることができる。
オルゴールに付けられた紙はとある個人を表し、穴はその人が誕生した日時の天体観測図をアーティストが楽譜へと転換したものである。
ポピュラーなメロディを奏でる叙情的なイメージが一般的なオルゴールだが、円筒状の金属のピンや紙の穴として物理的にコード化された楽譜が音に変換される機構をもつ。本作の、穴開きカードによるオルゴールは、バベッジの解析機関(プログラム可能な計算機)、ひいてはジャガード織機のパンチカードまで遡ることができる。
近代以降、大量生産や膨大な情報処理へと邁進してきた機械やコンピュータに代表される科学技術は、同時に世界や人間を数値へと抽象化した。三木は、日々の挙動や思いをもデータとして処理される現代において、情報処理の起源としてのパンチカードをアートを介して個人の生へと引き戻す。いつどのオルゴールをいかに演奏するか。それによって空間では、「誕生の讃歌」がその都度立ち上がることだろう。
見知らぬ「誰か」の誕生を、「誰か」が演奏すること。それは見知らぬ誰かの生を思うとともに、自身の生に向き合うことでもある。と同時にさまざまな他者ー過去に生まれて亡くなった人々や未来に生まれ来る人々の生、そして人間以外の生ーとの想像的な出会いをも喚起するだろう。
三木は文学、数学、天文学、音楽などの領域を行き来し、多様なメディアを駆使しながら一貫してコードの変換の問題を扱ってきた。作品は、一人の手によるものとは思えないほど多岐にわたる。しかしいずれの作品でも、コードの抽象性が具体的な人やモノとつなげられることで、コミュニケーションへの希望が志向されている。
本作はまさにその実践の場であり、あなたの参加を待っている。
四方幸子
*厳密にはパンチカード式手回しミュージックボックス「オルガニート」
■ 企画
キュレーター:四方幸子(Yukiko Shikata)多摩美術大学・東京造形大学客員教授
マネジメント:桑原康介(Kousuke Kuwabara) gallery to plus代表
■ 協力
木村敢 様
小林直和・千里 様
名取純一 様(オルゴール館ホール・オブ・ホールズ館長)
降旗健敏 様(日本電産サンキョー株式会社)
■ 協賛
日本電産サンキョー株式会社
三木麻郁 / Maaya Miki
1987年大阪生まれ、福岡育ち。東京都在住。2013年武蔵野美術大学油絵学科卒業、2015年東京芸術大学大学院先端芸術表現専攻修了。特定の領域におけるルールを外の領域に転移させることで既存の意味を再考させる作品を制作する。
2012年よりプロジェクト「3.11にシャボン玉を吹きながら歩いて家に帰る」を毎年展開。近年の主な個展に「 鐘の音に色 kanenoneni-iro 」(Capleville写真館&カフェ、2017)、「sink-sign- sing:深く沈んだ信号が、私に詩を奏でている」(22:00画廊、東京、2013)、「3331アンデパンダン・スカラシップ展vol.2」(アーツ千代田3331、東京、2012)。グループ展に小海町高原美術館開館20周年記念展(長野、2017)、上映プログラム「Meta-ecologies. The World Inside Us」(「EEC / Eco Expanded City」、ポーランド・ヴロツワフ、2016)。群馬青年ビエンナーレ2015(入選)、平成24年度武蔵野美術大学卒業・修了制作展 研究室賞、千代田芸術祭2011 展示部門 3331 アンデパンダン 四方幸子賞。